1989年11月8日水曜日

1989年11月08日 国会(衆議院) 野中広務

第116回国会 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第2号
平成元年十一月八日(水曜日)


○野中(広)委員

次に、この夏の参議院選挙におきまして、私の地元であります京都選挙区の選挙において、日本共産党は投票日に切迫をいたしました七月十九日から二十二日にわたりまして、それぞれ投票を依頼する目的で、党の名称及び候補者の氏名を表示した日本共産党中央委員会発行の機関紙、一九八九年七月二十三日付赤旗日曜版の見本を京都市を含む府下の主要地域に広範囲にわたり、赤旗日刊紙を購読していない不特定多数の有権者に約五十万部を無償で配布したと仄聞するところでございます。

この配布行為は、外形上、赤旗日曜版の購読を勧誘するように装っているものの、文書の内容や配布地域、配布部数、配布時期などを総合して考えてみますと、明らかに公職選挙法第百四十二条の文書図画の頒布の禁止を免れる行為でありまして、選挙運動が公正に行われることを図る同条の趣旨に反するものと考えるのであります。もしこのような勧誘行為をさえ装っていれば公職選挙法第百四十二条で言う文書図画の頒布の禁止を免れることになれば、同条はこの点から有名無実になると思われるのでありますが、この点についてのお考えをお伺いいたします。

さらに、これを許せば、機関紙をフルに活用できる政党や政治団体がそうではない政党や政治団体より圧倒的に選挙を有利に戦えるとともに、金のかかる選挙を助長するおそれがあると思われるのでありますが、このことは選挙の公正という立場から問題が多いと思うのであります。これらの各点について御所見を賜れれば幸いであると思うのであります。

一方、赤旗は機関紙として正式に自治大臣に届け出をしておるのであるから、公選法第二百一条の十四の規定により、一般新聞の選挙報道、論評を掲載した配布方法の規制より緩和されており、同条において第百四十八条第一項及び第二項の規定を準用しているものの、この場合では「同条第二項中「通常の方法(選挙運動の期間中及び選挙の当日において、定期購読者以外の者に対して頒布する新聞紙又は雑誌については、有償でする場合に限る。)」とあるのは、」「当該機関新聞紙又は機関雑誌で引き続いて発行されている期間が六月以上のものについては「通常の方法(当該選挙の期日の公示又は告示の日前六月間において平常行われていた方法をいい、その間に行われた臨時又は特別の方法を含まない。)」と読み替えるものとする。」と規定されており、したがって、赤旗日曜版見本の配布行為、各戸無償配布は、公選法第二百一条の十四に照らして適法であるということを主張しておるのであります。しかし、このような赤旗日曜版見本の配布行為は、前にも述べましたように公選法第二百一条の十四で言う「平常」の配布方法を著しく逸脱したものでありまして、同条に照らしても違法であると考えるのであります。

私が本質問におきまして問題にしたいのは、このような赤旗日曜版見本の配布行為は、明らかに公選法第百四十二条の文書図画の頒布の禁止を免れる目的で機関紙の勧誘行為を装った脱法行為であるにもかかわらず、日本共産党の弁明を許すのは、法の不備あるいは公選法第二百一条の十四の規定のあいまい性に起因するのではないかと思うのでありますが、この点についてのお考えを伺いたいと存じます。

○浅野(大)政府委員(※自治省行政局選挙部長)

御指摘もありましたように、公選法は百四十二条で、文書の頒布ということについて厳しい制限を置いております。一方、新聞につきましては、報道、評論の自由が尊重されなければならないということがございますものですから、これまでもしばしば新聞紙、あるいはなかんずく政党機関紙というようなものについていろいろ御論議が行われてまいりまして、そういう御論議の中でいろいろな改正も行われてきたわけでございます。

もう十年以上前になりますが、一番新しい大きな改正としては、例えば昭和五十年の改正で、いわゆるビラ公害という批判に対応するために、号外、臨時号のようなものは頒布してはいけないというような規制も行われたわけでございます。ただ、そのときに、新聞である以上、その新聞の頒布自体を禁止するというところまではもちろんできないわけでございましょうから、あくまでも通常の方法、従来やっていたと同じような形で配るものであるなら、それまで禁止するわけにはいかないだろうということで、現在のような法制に至ったのだと承知をいたしております。

ですから問題は、一体頒布の方法が通常の方法であるかということでございまして、特に通常かどうかということにつきましても、今申しました昭和五十年の改正の際に、「平常行われていた方法」というふうに法律上もちゃんと書くというような改正も行われたわけでございます。具体の事例につきましては私どもは事実関係を詳細に知っておるわけではございませんので、どういうふうに当てはまるのかということについては、恐縮でございますが申し上げることはできないわけでございますけれども、要は通常の方法で頒布されたかどうかということの認定の問題であろうと思います。

なお、百四十八条の方には定期購読者以外は有償に限るというような規定がありますので、そういう規定があればあるいはもっとはっきりするのかもしれませんが、実は昭和五十年の改正の際に、政府原案では二百一条の十四もそういうような文言が入っておりましたけれども、国会での御修正で現在の形になったというような経緯もあるということでございます。

○野中(広)委員

もう少し詰めたいのですが、時間が参りましたので、これで終わります。