1980年7月3日木曜日

1980年07月03日 東京都議会 保坂三蔵

昭和55年_第2回定例会(第9号) 本文 1980-07-03

5 ◯六十七番(保坂三蔵君)

(略)

衆参両院の初のダブル選挙が終わりまして、昨日の代表質問で、わが党の小林副幹事長が総括を行ったとおりであります。ところで、今回ほど明るく清潔な選挙にしたいという国民の願いが高まった選挙もなかったといわれておりますが、とりわけ東京では、首都として世界に恥じない公明選挙を展開しようという都民の努力は大変なものでありました。ところが、その知事のひざ元で、白昼堂々と大胆かつ大仕掛けな選挙違反が行われたのであります。

思い返しますと、ちょうど三年前の参議院選挙のときに、都職労内の共産党系の組織が、参議院議員候補者夫人を勤務時間内に都庁に呼び出しまして、投票の依頼をさせた事件がありました。当時は、美濃部都政の末期でありまして、一部職員によりまして服務規定はないがしろにされ、まさに綱紀紊乱は極に至っておりましたが、知事も結局事実を認めて、本会議にて陳謝した一幕がありました。その後、鈴木知事誕生と相まって、心ある職員の努力によって反省が喚起され、同様な誤りを二度と犯さないというムードがみなぎっておりました。鈴木知事も心中ひそかに期待をしておられたと思いますが、そのやさきに今回の事件が発生したのであります。

事件は選挙突入前から行われましたが、公示後は精力的に行われました。それは、本来選挙運動を全く禁止されているはずの職員が、都庁の入り口で、朝の登庁ラッシュアワーに合わせて、特定政党の支持、具体的にいえば共産党の支持、他党批判のビラを連日配りまくったのであります。選挙戦の過熱とともに力も加えられまして、六万人の本庁職員に間断なく行われましたが、ついに十四日には八十名を超える職員が繰り出し、しかも、共産党全国区候補の宣伝カーまでもこれに参加しまして、共産党の法定二号ビラ等を配布するに至りました。あきれて見るに見かねた都民の通報によりまして、翌日の朝刊で某紙が記事として扱ったほどでありますが、実は、これらは本庁以外でも文京、品川等の各区役所でも組織的、計画的に行われたのであります。

このような言語道断な事件は、具体的に共産党の票を伸ばした効果につながっておりますので、このまま放置をすれば再発は必定であり、法も恐れぬ、しかも、都民から都職員の信用を失墜させた事件は絶対に防がねばならないと思います。私たちもこの事件には黙過できず、今回の事件を徹底的に調査をしようといたしまして、ビラ配布者の氏名、所属の職場、組合の役職名を現実に確認いたしました。また、動かぬ証拠写真の撮影にも成功したところでありまして、いつでもこれは公表できる状況にあります。

そこで、知事及び総務局長にお尋ねをいたしますが、今回の事件が事実としてあったことを率直に認められるかどうか、また、もし認められた場合は、これらの職員の行為は、単純に庁舎管理規定等の違反にとどまらず、明らかに地方公務員法三十六条、公職選挙法百三十六条、二百三十九条の二に違反している行為と思われますが、この点のご見解を伺いたいと思います。

また、選挙終盤の二十日、進行中の選挙について他党批判の記事を掲載したビラが、第一本庁舎の職員のデスクに一斉に配られました。しかも、出納長室決算課職員落合某という実名入りのビラであります。組合の活動とはいえぬ選挙期間中のこの種の行為も、明らかに法律違反の悪質な行為であるばかりか、庁舎内があたかも治外法権下にあるがごとき組合の専横ぶりには、もはや断固として許すわけにはいかないのであります。当局の責任ある答弁を求めてやまないものであります。

このほか、私たちが事実として知り得た情報では、ある小学校の教師が、家庭訪問の際、さりげなく選挙運動をした事件がわかりました。また、ほかの学校の女性教師が自分の担任の家庭を訪問いたしまして、「赤旗」の定期購読を勧誘した事件も発覚いたしました。十指に及ぶ事件がわかったわけであります。恐らくこれらは氷山の一角と考えられますが、公務員はすべての選挙運動に加担できない大原則を持つのみか、都民に対しては率先垂範、公明選挙を推進していく立場にあり、このままではゆゆしき事態まで予測されます。しかも、これらの事件を恐れた当局は、すでに五月二十日付総務局長名で、職員の職務規律確保についての通達を出しているのでありますから、これらは通達への挑戦であるばかりか、正義を愚弄する行為であり、旧来どおりの一片の通達等のお茶を濁したような対策では絶対に解決しない証左であると考えます。この際、私は罪を憎んで人を憎まずの心はありますが、まず隗より始めよのたとえのごとく、違反者を厳しく処して、庁内の職務規律を回復させ、都民の信頼を取り戻す姿勢を示すべきであると考えますが、知事のご決断のほどを具体的にお伺いしたいと思います。

(略)

6 ◯知事(鈴木俊一君)

(略)

次に、先般の選挙に関連をしての職員の服務規律の問題でございます。

今回の選挙に際して、都の一部の職員が法定ビラを配布し、あるいは特定の候補者への投票を勧誘するなどの事実を挙げて、ご質問がございましたが、ご指摘のような行為は地方公務員法や公職選挙法に抵触すると考えられ、きわめて遺憾であります。また、庁内におけるその他のビラについても、正常な庁内の秩序を保持する観点から見て好ましくないと考えます。すべての職員は、全体の奉仕者として政治的に中立の立場を保持し、公正にその職務を遂行すべき責務を負っております。今回の選挙に際しても、選挙期間中の職員の服務規律の確保について、文書により周知徹底を図るとともに、私みずから庁内放送で注意を喚起したところでございます。今後、再び都民の批判を招くことのないよう、各所属長を通じ、服務規律の確保について指導するとともに、万一違法行為が生じた場合には、法に照らし厳正に対処してまいりたいと思います。

(略)

7 ◯総務局長(沢田茂弥君)

 今回の選挙に際しましての都の一部の職員の行動についてでございますが、ただいま知事からも申し上げましたとおり、ご指摘のような行為は、地方公務員法三十六条でございますとか、公職選挙法百三十六条の二に抵触するものと考えられます。大変公務員としての自覚に欠ける行動でございますので、今後十分節度ある行動をとるように厳しく戒めますとともに、厳正な措置をしてまいりたいと考えております。

(略)